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札幌高等裁判所 昭和52年(ネ)264号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

被控訴人は、被控訴人会社代表取締役石川から松本に対し、昭和四二年七月二四日被控訴人会社の本件通常実施権及び消火栓標識等の全財産が譲渡されたこと及び当時被控訴人会社は右石川のいわゆる一人会社であることに関する控訴人の主張は民事訴訟法二五五条又は一三九条により許されない旨主張しているところ、本件記録上次の事実が明らかである。即ち、控訴人は、原審第一回準備書面(昭和四六年一〇月二六日付)の一(3)及び(4)において、昭和四二年七月二四日の本件契約当時被控訴人の発行済株式を所有しかつ代表取締役である石川が松本との間に本件契約を締結した旨主張したが、昭和四六年一二月二三日の準備手続期日において、右契約は石川個人と松本間に締結されたという意味であると訂正し、昭和四八年九月二五日付準備書面の一及び二において、昭和四〇年八月一一日ころ、被控訴人と松本間において被控訴人が取得する本件通常実施権及び消火栓標識ポールが松本に帰属する旨の約束ができた旨の主張もするに至つたが、右準備手続中において、昭和四二年七月二四日の本件契約当時石川が被控訴人会社の発行済株式全部の株主である旨の主張には変更はなかつた。そこで、昭和四九年四月一〇日の準備手続期日における要約調書には右の主張がいずれも記載された。その後、控訴人は、原審における昭和五一年六月二二日付準備書面第二において、前記昭和四六年一〇月二六日付準備書面における主張と同内容の本件契約の主体は被控訴人である旨の主張に整理し、それは第一三回口頭弁論(昭和五一年六月二三日)で陳述された。そして、当審において、控訴人は、昭和五二年一二月一九日付準備書面中で同様の主張をしたが、その後動揺し、結局昭和五五年一一月二六日付準備書面及び同月二八日の第四回準備手続期日において、昭和四二年七月二四日の本件契約は被控訴人代表者石川によりなされた旨の主張のみに整理し、かついわゆる一人会社という用語を使用しての主張は、昭和五四年一二月一二日付準備書面においてなされたことが明らかである(本件契約当時石川が被控訴人会社の発行済株式全部の株主であることの主張には変化がない)。

右のとおりの主張の経過が認められるのであるが、裁判の適正と民事訴訟法二五五条又は一三九条との関係は困難な問題であるけれども、結局それは具体的な事案に即して決せられるべきであると解されるところ、本件においては、右の通り、控訴人は、本件契約の当事者が被控訴人代表者石川か個人としての石川かについては動揺を示したものの、昭和四二年七月二四日の本件契約そのものの存在及び右契約当時石川が被控訴人会社の発行済株式全部の株主であつたこと(このことは、被控訴人会社が石川のいわゆる一人会社であつたことをも意味する)は、本件訴訟の最初の段階から一貫して主張し、要約調書上にも記載されているのでありまた原審及び当審を通じ、右の点に関連し(特に右後者の主張は、本件訴訟で争われている被控訴人会社の株主総会決議不存在の主張とも関連する)極めて詳細に証拠調のなされていることが記録上明らかである。契約の当事者が法人か個人かということはもちろん重要な事項であり、これにつき主張を動揺させた控訴人の態度が相当といい難いことは明らかであるが、既に証拠調が終了した段階で、それまでに顕れた証拠に即して控訴人がその主張を補正し、しかもそれにより新たな証拠調をすることなく判断が可能であると認められる本件においては、控訴人の前記主張は、民事訴訟法二五五条一項但書の著しく訴訟を遅滞せしめざるときに当ると認められ、かつ同法一三九条の時機に後れ訴訟の完結を遅延せしむべき防禦方法であると認めることもできない。

(安達昌彦 澁川滿 大藤敏)

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